長い『待ち時間』を解消できない大学病院、大病院

『大学病院』は、待ち時間が長くても仕方がないのか?

●『大学病院』は、『予約診療制』にしていますけど、『患者さん』は、3時間待ちとかザラです。

→『予約時間』に受診しても、診療が終わるまで3時間以上かかる。この状況に患者さんも先生も慣れてしまっています。

⚫︎『予約診療時間』が午前10時でも、受付、院内の移動、診察前の検査など、診察に辿り着くまでの時間が膨大。

⚫︎『心電図検査』、『胸部レントゲン検査』、『超音波(エコー)検査』、『血液検査』など、診察前の検査に時間がかかっている。

⚫︎『CT検査』、『MRI検査』、『シンチ検査』などは、検査時間もかかるし、安全に検査を行うために慎重であるため、予定の時間を超過しやすい。

⚫︎『CT検査』、『MRI検査』は、『放射線科専門医』の『読影(画像診断)』を待つことがあり、診察時間に間に合わない。

⚫︎『患者さん』は、『手術後』であったり、『ご高齢』であったり、移動時間を要しますし、患者さんのご家族が説明をご希望される場合には、診察時間が長くかかってしまいます。

・15分間隔で『患者さん』の予約診療を受け付けていても、15分間だと、1時間で4人しか診療できません。

・午前9時〜午後12時まで3時間の診療では、1時間4人×3=12人。大学病院の医師1人、午前中12人しか診療できていない。

→実際は、20〜30人の患者さんを診療しているので、どうしても3〜5分診療の『患者さん』が出てしまう。

⚫︎朝一番、午前9時に予約診療を入れたとしても、

・8時30分ごろに来院→8時40分受付終了→心電図検査、胸部レントゲン検査終了時点で9時15分→診察終了9時30分→薬剤部で薬を受け取る(実は此処が長い)10時前→受付会計終了10時半。

・高血圧、狭心症の患者さん、60日処方、心電図、胸部レントゲン検査しかない場合でも、10時半。

◉『大学病院』は、処理能力を超えた『患者さん』を診療している。

◉『大病院思考(大学、大病院を受診したい患者さんが多い傾向)』は未だ健在。

◉処理能力を超えた患者さんをこなしても、赤字経営の『大学病院』が殆ど。

◉『大学病院』という特性上、赤字診療部門を縮小したり、削減できない。

患者さんの待ち時間が長いのは、診療している先生、医療従事者の責任ではない。

●『患者さん』の待ち時間が長いのは、先生、看護師さん、理学療法士さん、薬剤師さん、医療事務さんなど、頑張っておられる『医療従事者』の方々の責任ではありません。

→間違いなく、『大学病院』の診療システムと、人不足の問題です。

●患者さん1人に15分間の時間をかけると、1時間で4人しか診療できません。

→この診療時間には、カルテを記載する時間、血液検査をオーダーする時間、次回診療を予約する時間を全て含めているわけではありません。

→外来診療時間に記載できなかったカルテや、患者さんの診断書、生命保険の診断書、外来診療要約などは、全て、外来診療が終わり、病棟業務が終わり、実験、研究時間の前に終わらせています。

→プライベートな時間、自分の時間など作れるはずはなく、データ整理、学会発表準備、論文執筆は、深夜か土日を潰して行います。

→疲弊するだけ疲弊して、成果が出なければ、関連病院に出向か、開業するしかない。或いは、医局や研究センターで寂しく、コツコツと研究を続けますが、若い医者、研究員を補充してもらえません。

→結果、退職するしかない。或いは、一発、目立つ研究成果を出す賭け。まず、無理です。研究費が無く、人が居ないから。

→研究成果は、研究対象が時代にマッチし、金、人、時間をかけただけ大きくなる傾向があるからです。

●『大学病院』の先生は、『外来診療』以外の仕事が多すぎるし、『臨床医』の評価が低すぎる。

→『大学病院』の使命は、『臨床』、『研究』、『教育』の三本柱。

→この三本柱を支えるため、『診療』、『大学病院の黒字化』の為に働く『臨床医』が必要。

*『大学病院』は、教授選に敗れたり、教授よりも年配の先生が退職する傾向にある。

*『大学病院』は、関連病院に医者を出しているが、本丸の大学病院の外来診療を行う先生が明らかに少ない。

*患者さんの数の割には、外来診療枠が少なすぎる。

→外来診療、検査を行い、『大学病院』の黒字化に貢献する臨床医への評価が低すぎるため、医者は疲弊し、心が折れ、関連病院に出向して就職したり、開業してしまう。

→この繰り返しを延々と行っているので、『万年診療医不足』。患者さんの待ち時間が減ることはない。

◉深刻な点は、現在、『大学病院』に勤務している先生の給与を充分に支払っていないのに、赤字であるということ。

◉講師以下の先生は、『大学病院』の給与だけでは、医者としての平均的な生活を送ることができない。

◉一部の高名な教授以外は、講演会、製薬会社依頼の講演がなく、『関連病院巡り』を行って、副収入を得ている現実がある。

◉大学組織も、『医者』は他の医療機関で稼ぐので、この程度の年収で良い、と考えている。明らかに差別。

◉『大学病院』は、『看護師さん』、『医療従事者』の組合は強いのに、『医者』の組合は非常に弱いか無力。

→『大学』の学長、『大学病院』の病院長、一部の教授だけが、権威を背景に仕事をしている。

→『医者』は、奴隷の如くに働くか、最近の研修医システムに従って、患者さんの容体が悪くなろうが、急変しようが、勤務時間を守るようになる。

◉2024年までに『医師の働き方改革』が行われるので、間違いなく、救急病院、民間病院の当直医、救急医が不足する。

困るのは患者さんだけど、全く知られていません。『医師の働き方改革』(厚労省)については、コチラです→https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwji_uzkwbP2AhVVr1YBHWENDuQQFnoECAQQAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F10800000%2F000516867.pdf&usg=AOvVaw0Ef9fKl4F1cCPnAvQwhge7

●『医師の働き方改革』で勤務時間が制限されると、地方の民間病院は、当直医を確保できない。

→病院の夜間受け入れが不能になるばかりでなく、入院中の患者さんが急変しても対応する医者が居ない、という恐ろしい事態が起こり得る。

●現在、『医師の働き方改革』に対して、医師会が厚労省に提言を行っていますが、反応は殆どありません。

→医師会は、『開業医』の先生が多いので、『医師の働き方改革』が現実的に行われても、困る先生は少ないです。

→完全に自分の『クリニック』のみの勤務ですので、『医師の働き方改革』で『開業医』の先生は困ることは殆どない。

敢えて困るとすれば、外来診療に来られた『入院、手術を要する救急患者さん』を受け入れる『大学病院』、『民間病院』が減少する、という問題。

→本当に困るのは、患者さんや、救急搬送する『救急隊』。

●『コロナウィルス感染症の拡大』で、救急搬送しても30以上の病院に受け入れを断られている現実が、何も生かされていない悲惨な状況です。

●医者に労働時間制限を設けるのは賛成ですけど、あまりに急であり、準備不足は間違いない。

●完全に『医師の偏在』が起きていて、困る地域、病院が浮き彫りになる。

→病院は診療体制を縮小するしかない→赤字になる→閉院、休診→患者さんが困る。

現状でも患者さんの長い待ち時間を解消できていないのに、働き方改革を行って大丈夫なのか?

●2024年までに『医師の働き方改革』が導入される。

→勤務時間を超過した先生は、帰宅するか、業務を休まなければいけません。

●外来診療をおこなっているのは、30歳代〜50歳代の先生。

→現在、当直明け、救急当番明けでも、寝ずに診療しています。

→この体制がアウトになる→『医師の働き方改革』で外来診療を行う先生が減ることは間違いありません。

→患者さんの待ち時間が、また、長くなる。

●研修医の先生や20歳代〜30歳代前半の若手の先生も当然、対象です。

→若手の先生が徹夜明けでも踏ん張る医療は、ここ数年で完全に瓦解している。

→この体制に『医師の働き方改革』が導入されると、病院に医者が居ない、『無医状態の病院』が生まれる可能性がある。

◉常勤医師の少ない田舎の病院、地方の大学病院は、診療体制が維持できなくなる。

◉『医療費抑制』のため、国は在宅医療を推進し、『かかりつけ医』という名目で『在宅診療』、『看取り』を推進してきた。

→『開業医』も日々の診療、『在宅診療』、『看取り』、コロナ関連医療(PCR検査、ワクチン接種など)で疲弊している。

◉これらの全ての『皺寄せ』が患者さんに降りかかる。

→病状が悪くても診る医者が居ない。救急車を受け入れる病院が無い。

*一体、どうするのか?厚生労働省は、明確な返答はせず、『医師の働き方改革』を突き進めている。

*『医師の働き方改革』には賛成だけど、患者さんに『皺寄せ』が来るのは良くない。

◉『コロナウィルス感染症』で医療現場がアタフタしている最中、『医師の働き方改革』を進め、患者さんの窓口負担を2割に増やす国は、『鬼』としか思いません。