クリニック経営 ヤブと思われない検査方法

血液検査の項目の選び方は、教えてくれない。

○血液検査の項目は、研修医時代から教えてもらえる機会が少ないのは問題です。

ブラックは、指導医に恵まれていたのかも知れません。厳しく指導を受けた経験、優しく教えてくれる先輩に囲まれて幸せな研修医、専修医時代を過ごしました。

血液検査の項目、選び方、考え方に関しては、全くの個人的な見解ですので、どうぞご了承ください。

◉患者さんに合わせて検査を行うことは言うまでもありません。

1)持病の種類、既往歴、内服薬の種類などに応じて、血液検査内容は変わります。

2)患者さんの経済的な事情に応じて、血液検査内容は変わる可能性があります。

3)検査を行なった以上、結果は丁寧に説明する。

もう、この3点だけです。クリニックの経営が良い、悪いは、関係ないと考えています。この2点を貫くと、自然と患者さんは血液検査に慣れてくるし、25年間、同じスタイルを貫いていますが、ラッキーなだけかもしれませんが、クレームを受けた記憶は殆どありません。

○オーソドックスな検査項目で点数をあげようと思わない。更に、オーソドックスな検査項目を削ってコストをカットしようとしない。

○セット検査を作らない。面倒、手間だけど、その都度、患者さんの血液検査の度、検査項目を選択する。

○点数の高い検査の場合には、患者さんに一言、伝えておく。大まかな金額を伝える。

格好をつけるわけではないですが、患者さんは人間ですので、機械的に検査されている印象、ぼったくられている雰囲気を出すと、検査に警戒感、不信感を抱くものです。

抽象的な記載をしても無意味なので、具体的にまとめてみました。

検査結果を見ると、医者の能力、クリニックの経営状態が分かります。

○T.P、Alb、T-Bil、AST、ALT、Gamma-GTP、ALP、BUN、Crea、eGFR、UA、T-cho、TG、LDL、HDL、血糖、HbA1c、血計、Na、K、Cl、Ca。

上記、肝機能、腎機能、脂質、尿酸、血糖、電解質、貧血などの項目は、6ヶ月毎の血液検査の際、必ず、行います。

HbA1c:49点(490円)、血計:21点(210円)(昔に比べて随分と安くなりました)以外は、項目数で診療報酬が変わります。

5項目〜7項目:93点(930円)、8項目〜9項目:99点(990点)、10項目以上:106点(1060円)です。

当然、18項目ありますから、10項目以上の検査に関しては、項目数が増えても報酬は増えません。外注検査に出そうが、院内検査で行おうが、なるべく、生化学検査の項目数は10項目に抑えた方が良い、と考えるのは妥当です。

この時、ASTのみ測定して、ALTを抜く、電解質を測定しない、Creaのみ測定して、BUNを抜く、などの検査項目にしておられる先生が居られます。

前述した通り、正解はありませんし、個人的な考えです。救急、転院などの際、患者さんが持参された血液検査を見て、項目を削っていると、「細かいことをしているな」と思います。

10項目以上の測定をガンガン行なっても、血液検査を行えば行うほど、損をしない「逆ザヤ防止」を行なっていないから、このような「歯抜け検査」になります。血液検査会社に見積もりを出させて、徹底しましょう。

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記載の必要もないのかもしれませんが、「ASTのみ測定して、ALTを抜く」と肝機能の評価が行えません。「Gamma-GTPを測定して、ALPを抜くと、骨疾患、代謝異常を見落とします。」、「電解質を抜くと、高齢者の患者さんの病態を把握できません」し、「骨粗鬆症の薬剤内服中の場合には、高カルシウム血症を見落とします」。更に、慢性便秘に対して「マグネシウム」を測定していないと、高マグネシウム血症を見落とします。

上記は、高齢者の院長先生に多い傾向にあります。10項目以上の項目をガンガン測定しても、生化学検査の判断料:144点(1440円)を算定できますので、余程、困っていない限り(普通、あり得ないけど)生化学検査をケチる意味はありません。(医科点数早見表の生化学検査(I)というところの項目です。)

○生化学検査は、項目数を気にせずに行なって、次に繋げるだけです。

ALPが高ければ、骨粗鬆症、甲状腺疾患の可能性を否定するため、次の血液検査で、甲状腺刺激ホルモン(TSH):101点(1010円)や、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b):156点(1560円)を測定するだけです。

最初の10項目をケチるから、次の高点数検査に進めない。まさに「貧すれば鈍する」医療になっていると思われます。

甲状腺機能異常があれば、頸部エコーを行えば良いですし、TRACP-5bが高ければ、骨密度検査を行うだけです。AST/ALTの上昇、ALT優位の肝機能異常があれば、IV型コラーゲン:148点(1480円)、ヒアルロン酸:179点(1790円)を測定し、肝繊維化の評価を行い、腹部エコーを行うだけです。

頸部エコーの際、心エコー、腹部エコーまで行っても良いですし、(頸部と心エコー、頸部と腹部エコーの算定は可能です。)、骨密度検査を行うのであれば、レントゲン撮影を行い、骨折の有無を見るのも良いと考えています。

いずれにしても、どんどんと検査が広がりますし、診断、病態評価に繋がるので、良質な医療を行いながら、売り上げも伸びます。

高カルシウム血症では、多発性骨髄腫、副甲状腺機能異常、骨粗鬆症の内服薬による弊害などがあり得ます。当院でも2〜3年に1例の頻度で、副甲状腺機能異常の患者さんが居られます。

最初をケチるだけで、患者さんの病気を見落とし、病態を把握できず、診療報酬も伸びません。更に、骨髄腫、甲状腺疾患、高カルシウム血症による腎障害を見落とすと、評判すら落ちかねません。

患者さんも人間ですので、検査結果から考えられる病名、必要な検査を説明すると、ご本人、ご家族がスマホ、ネットでしっかりと調べられ、検査を受けてくれますし、何より、信頼してくれます。

最初の10項目以上を削っている段階で、「閑古鳥クリニック」のことが多いのは、上記の流れを踏まず、評判が上がらずに集患に繋がっていないからでしょう。

高点数検査を行う際、病名とレセプトへの記載を忘れない。

ここからは専門の先生によって異なると思いますが、1項目で100点(1000円)を超える検査を行う際には、病名が抜けないこと、レセプトへのコメントを記載した方が無難です。

保険の審査は、ローカルルールが横行していますので、断言はできませんが、病名、検査を行なった理由を記載しておけば、頻繁に検査を行なっていない以上、減点はされません。

高点数な検査には、外注費用もかかっていますから、減点されると痛いです。

ほとんどの高点数検査は、6ヶ月に1回、算定できます。実は、「医科点数早見表」には、どれくらいで検査して良い、と記載していません。経験的に、ヒアルロン酸とかTRACP-5bは、3ヶ月毎に測定すると、減点されているので、お気をつけください。(ローカルルール全開です。)

◉具体的な病名、コメントにつき、ご参照ください。(当院での記載)

⚪︎ヒアルロン酸:(病名):慢性肝炎 (コメント):慢性肝炎を有し、肝繊維化の評価のために測定。数値入力。

⚪︎TRACP-5b:(病名):骨粗鬆症 (コメント):骨粗鬆症を有し、病態確認のため、骨破壊マーカーを測定。数値入力。

⚪︎NT-proBNP:136点(1360点):(病名):慢性心不全、うっ血性心不全:疑い病名の場合には、胸部レントゲン検査、心電図検査を行う必要があります。減点リスクが高い。(コメント):心不全の評価を行った。

⚪︎乳酸:メトホルミン製剤内服中のため、副作用、乳酸アシドーシスの有無を確認した。→非常に多いですが、「乳酸アシドーシスの疑い」という病名は不要です。

⚪︎アミラーゼアイソザイム、ALPアイソザイム:(病名):高アミラーゼ血症:(コメント):アミラーゼが高値であり、アイソザイムの確認を行った。

⚪︎心エコー:弁膜症の病名をつけておけば大丈夫です。頻繁に行っていない限り、コメントは不要です。頻繁とは、6ヶ月未満で行った場合です。ほとんど減点されますが、心タンポナーデで入院したり、急性心筋梗塞で急遽、搬送した場合には減点されません。緊急搬送した事実をレセプトに記載しましょう。

書けばキリがないですが、10項目の生化学検査で検査項目を削ろうとした先生と、10項目以上の項目になろうが、病気を見つけよう、病態を把握しよう、と前向きに進んだ結果、医療が全く変わってきます。もちろん、売り上げも変わります。

言い方は悪いですが、「チョコチョコ、チョコチョコ、血液検査を習慣的に行なって病気が見つからない」よりは、「6ヶ月〜1年に1度、しっかりと検査をした方が患者さんのため」になります。

10項目にこだわる先生は、高齢者の先生に多いので、血液検査を深化させ、エコー、超音波検査、骨密度検査に進むことができないし、設備もないのでしょう。

医療は、明らかに情報戦ですが、患者さんも情報を得ています。しっかりと説明すると、次の診察の時、ご家族がネットで調べていることは頻繁です。信頼が深まり、更なる検査、精査から、長い年月の通院を経て、在宅訪問診療にまで結びつき、患者さんの数、売り上げも増えるものです。

研修医の時、「検査をしない勇気を持ちなさい」、「教授回診のために血液検査をするような低レベルな医療を行うな」、「血液検査は裏付けでしかない。問診、触診、聴診の結果、血液検査で答え合わせをする覚悟で診療しろ」と指導いただいた先輩方には、25年経って、感謝しかありません。

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