総合力で勝負。
たとえ良い医療を提供していても、窓口での受付事務員さんの対応が悪ければ、患者さんの再来率は落ちます。それどころか、電話対応が悪いため、受診率すら落ちる可能性があります。
受付事務員さんだけではなく、看護師さんの電話対応も非常に重要です。現在、コロナワクチン接種のお問合せが増えていますし、その他、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンのお問合せ、在宅訪問診療や精密検査のお問い合わせに対し、丁寧にお答えできるよう、教育を徹底しなければ、患者さんは来院していただけません。
電話対応、ご挨拶、言葉遣いなどの接遇を徹底していれば、来院された患者さんの再来率は高いまま維持されます。
高血圧、糖尿病、心不全などの生活習慣病、慢性疾患に関して、当院の患者さんの再診率は、ほぼ100%です。また、特定健康診断やインフルエンザワクチン接種に関しても、再診率:95%以上を維持しています。これは、当院の職員さんが頑張ってくれていることが第一の理由ではありますが、正直なところ、周囲のクリニック、病院の接遇レベルが激低なためと考えています。
受付事務員さんの対応が悪く、看護師さんの態度もだらしがなく、医者に愛想がなければ、患者さんが来るはずはありません。
担行政地区内に開業されている院長先生に電話をかけることが多々あります。電話の要件は、個別指導、保険診療、医事訴訟の件など様々です。その際、クリニック、病院に電話をかけるのですが、受付事務さん電話対応が良いと感じる医療機関は、全体の1割程度です。所詮、そのレベルですので、差別化は簡単なはずです。
◉人不足に悩む医療機関が多いですが、良い人材が集まるところに集まって動かないからです。
医療事務さん、看護師さんのネットワークは半端なく強いです。特にママさんのネットワークは広くて強いです。幼稚園や学校の子供さん繋がりもあります。良い職場を構築すると、ネットワークを通じて、職員さんも患者さんも集まってきます。悪い評判も一気に広まりますので、ご注意ください。
当院は、以下の3つに気をつけて一気に職場が良くなり、離職者も激減しました。
1)院長は決して怒らない。感情的に叱らない。イライラしないし、急かさない。職員への注意は、奥さまが行うか、目に余るミスは、個別に呼んで1分間以内の注意。むしろ、業務がうまく運んでいるときには、やたら褒める。
2)プラスワン雇用を行い、有給休暇をとりやすくする。顧問の社会労務士の先生と契約し、就業規則を見直す。雇用条件通知を確実に行う。残業時間ゼロを目指す。
(プラスワン=医療事務さん、看護師さんを1人多めに採用することです。)
3)出勤時間はギリギリ出勤で構わない。3分以内の朝礼を笑顔で行う。
診療開始時間は、午前9時。出勤時間が8時30分の方と、午前9時の方が居られます。朝礼は午前8時35分、待合室の開錠時間は、午前8時40分です。午後のみのパート医療事務さんも居られます。朝礼内容は申し送りしてもらえば良いです。
職員さんは笑顔で働いています。文句を言わない職場に成長しています。
◉手当をつける。昇給を行う。誕生日のお祝いを行う。
リーダー手当、サブリーダー手当:当院には、看護師長さんは居ません。リーダー1人、サブリーダー2人です。事務長さんも居ません。こちらは、リーダー1人、サブリーダー1人です。職務内容は、看護師長さん、副師長さんと同じですし、事務長さんと同じですが、リーダーの方が聴こえが良いですし、プレッシャーも少ないようです。手当は、月:5000円程度。サブリーダーは、3000円程度に設定しています。
残業ゼロ手当:残業時間が5時間以下であれば、医療事務さん全員に月1万円を支給しています。
新人指導手当:新しく入職した方への教育係を決め、6ヶ月間、月:1万円、支給しています。2人の新人さんを受け持つことも可能です。2人とも指導させてください、と希望されるリーダー、サブリーダーに育っているので、嬉しいです。(お金目当てでも嬉しいです。)
職員さんのご機嫌伺いと感じる先生も多いかも知れません。経営する側からすれば、気持ちよく働いてもらい、勤続してもらい、パフォーマンスを上げて貰えれば良いと考えています。退職者も激減しますし、ご機嫌伺いして働き続けて貰えるのなら安いものです。ドライにビジネスと割り切っています。
逆に、退職者が続き、募集が無い職場は、延々と人不足が続きます。その結果、
人不足が限界に達して、業務が回らなくなり、人材派遣会社に頼むことになる。
人不足を職員さんに見透かされ、「こんなに忙しいなら辞めます」と採用を催促される。
外来診療、在宅診療、検査などで人不足が臨界点に達し、先生の精神状態も平穏でなくなる。
応募、即採用、という組織崩壊の序章。選択肢の無い採用を行わざるを得なくなる。
退職者が相次ぎ、派遣で採用し、また、退職する。この繰り返しでも「黒字だからいいや」と考える先生も居られるでしょう。価値観の問題ですので、良い悪いはありません。ただ、離職率が高いということは、魅力のある職場ではないことの裏返しであることに間違いはありません。
以前にも記載しましたが、入職者に対する指導は、職員さんにとって負担でしかありません。当院にように指導手当をつけると、指導への抵抗は減りますが、「またですか?」と看護師さん、医療事務さんに言われるのも辛いので、退職を減らす努力はした方が良いと思います。
勤務状況と通勤時間、雇用条件、家庭背景。
当院は、政令指定都市の外れに位置しています。人口8万人の漁港付近の地域です。クリニックは、でかい国道沿いに位置しています。ただ、田舎なくせに市の中心部と大都市まで国道一本で直結しているため、大都市までの通勤車が多く、朝、夕方の渋滞が半端ないです。
そのような中、医療事務さん、看護師さん、全員が自家用車通勤です。もちろん、全員分の職員駐車場を完備しています。
◉当院の職員さんの内訳
看護師さん:8名 医療事務さん:5名
この職員さんの中で、通勤時間が45分以上の方が2人居られます。
ママさん看護師さん 40歳代 勤続4年目 子供さん 小学校 扶養範囲内勤務 通勤時間:45分間以上
ママさん事務員さん 40歳代 勤続3年目 子供さん 中学生と小学生 扶養範囲内勤務 通勤時間:50分間以上
お二人とも通勤時間が長いのに、勤続3年以上です。ご自宅は都市部にあるので、転職を考えないはずはないと思います。
ただ、お二人とも他医療機関の勤務歴がありますが、人間関係で退職されています。
前の職場の人間関係で疲れ果てた。気を遣わないといけない「主」、「お局」が居て嫌だった。
いつも先生が怒っていて嫌だった。注意も長くて泣いたこともある。
残業時間が長くて、家の近くなのに、レセプトの締めのため、夜10時過ぎに帰ることが多かった。
有給が取れなかった。授業参観で休めなかったり、子供の熱で休みにくかった。
以上の理由があり、当面は当院に勤務してくれそうです。家の近くだから良い職場という訳でもなさそうです。
1)人間関係で悩まないように、経営者と奥様が常に目を光らせておくことは大事です。ただ、経営者と労働者という対立軸ができないように、外部の講師を呼び、接遇研修や職場教育を徹底することが大事です。
2)外部の講師は、当然に有料ですから、経営者のボイスチェンジャーになってもらいましょう。事前の打ち合わせは必須です。
3)職場は、働いてお金を稼ぐところなので、全ての労働をお金に結びつけることが勤続の理由のようです。
少しでも良い環境で医療を行えるように、売り上げと利益が伸びるよう、ブラック自身も精進しております。
採用の時、印象の良かった事務さん、看護師さん→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/staff-10/