離職率の計算。離職率を下げようと意識する。
⚫︎離職率=1年間で退職した職員さん/1年間で雇用した職員さんの総数×100(%)
年末に計算すると分かりやすいです。というより、年末、顧問税理士の先生が、確定申告の準備のため、職員さんの税金の計算をしてくれます。その際に、計算してもらえば良いです。(職員さんの中には、確定申告は自分で行う、という方も居られますが、殆どの職員さんは顧問税理士の先生にお願いするはずです。)
⚫︎ブラックのクリニックの最高離職率=退職者11名÷総職員17名(既に退職も含む)=64.7%
1年間で約65%という高確率で退職する職場を作り上げました。17年間かけて醸成させた職場です。我ながら「恐ろしな」と悪い意味で感動しています。
以前に記載しました通り、5年前、17年かけて地獄の果てまで突き進んだ時の離職率です。ブラックが経営に無関心。隙間時間に職員さんとの会話は無く、データ整理、論文整理か往診ばっかりの時期です。また、褒めることはなく、注意、怒ることは頻繁でした。
この後、顧問の税理士の先生、顧問の社会労務士の先生と契約し、家内に職場に入ってもらい、ブラックも本気になり、地獄を抜け出しました。現在まで離職する職員は居ません。
◉医療現場の離職率は約20%と言われています。1年間で5人に1人が退職する計算です。
転職は悪いことではありません。転職しないと永遠に良い職場に行きつかないからです。逆に言えば、良い職場に行きつけば、退職しないということです。
昔のブラックのクリニックは、通り過ぎる職場であり、長く勤める職場ではなかった。だから、離職率は半端なく高かったという事実、反省です。
◉離職率が高いと何故、悪いのか?
過去にも同様の記載を繰り返していますが、離職率が高いことで良いことは何一つありません。
1)新しく入った職員さんに対して、慣れた職員さんが指導しないといけないので、手間を取られる。
2)教育に手間を取られ、慣れた職員さんの業務効率が落ちる。
例えば、歯科衛生士さんなら患者さんへの口腔内処置や、看護師さんなら血糖測定、心電図検査など、任せておいても職員さんが自ら動いて診療報酬をあげてくれますが、その効率が明らかに落ちます。
顧問税理士の先生の試算では、歯科衛生士さん:月20万円前後、看護師さん:月10万円〜20万円の診療報酬減です。人の入れ替わりは明らかに財務上のマイナスです。
3)既存の職員さんのモチベーションが下がる。「えぇー、また、やめるんですか?」と言われるし、おそらく、陰口を叩かれて、経営者と職員さんとの関係が悪くなっています。
4)既存の職員さんから経営者への催促が始まります。「こんなに忙しいのなら、私も辞めます。」
5)職員さんから経営者への人事の注文が入る。組織のシステムが壊れ始める。
6)人がコロコロ入れ替わるという悪評が立つ。集患への影響が出ることもある。
7)職場に新しく入った方が、悪人の可能性がある。単純にリスクを抱える。
書き始めるとキリがありませんが、いずれにしても離職率が高い業種ですので、如何に他の職場と差別化して、離職率を抑えるか?経営者の腕の見せ所です。何を改善して、どのように業務を変えたか?具体的に記載してみます。
ドライに割り切る。即答しない。人に任せる。楽をする。
⚫︎経営者と職員さんは、立場も価値観も違います。分かり合おうという安易な考えを捨てる。
従業員さんを見下すという意味ではありません。経営者は、クリニックの医療、経営、労務など、全責任を負って業務を遂行してます。だからこそ、給与の設定から勤務時間まで、比較的自由です。
逆に、いつ、倒産するか?医療訴訟、労務トラブルが起きるか?全く分かりません。その他、多種多様のリスクと責任を抱えているからこそ、報酬も多いのです。
一方、職員さんは、嫌な職場だと辞めれば良いだけです。看護師さん、医療事務さんは、内心、割り切っているはずです。現に、経験済みですが、「気に食わなければ辞めるだけ」ですし、気に食わない職場を作っているのは経営者ですので、これも経営者の責任です。
⚫︎人材派遣会社と縁を切る。
人材紹介・派遣会社(全部ではありませんが、経験例を記載します)は、メール、ライン、携帯電話などで、既に紹介を終えて就職済みの看護師さんと定期的に連絡を取っています。
人材紹介・派遣会社は、会社によって支払い額が異なりますが、殆どの会社が看護師さんの年収の20%〜40%です。パート看護師さんの一時派遣は、時給:2200円〜2500円です。派遣されている張本人の看護師さんの取り分は、この時給の50%~60%です。(鬼ですよ、派遣会社って。ビジネスですから仕方ないけど。)
以上の背景から、人材紹介・派遣会社は、如何に看護師さんを契約期間を満了の6ヶ月〜12ヶ月後で退職させて、新しい職場に入れる込むか?この考えで金を稼いでいます。
全てが悪だとは言いませんが、1年経過すると、「どうですか?」と看護師さんに連絡を入れてきます。少しでも職場の悩み、愚痴を言えば、「貴方なら、もっと良い職場があります。」と転職を促します。その際、退職支援金、転職祝い金などの名目で3万円〜5万円のお金を渡しています。
しかし、年収300万円〜500万円の看護師さんを転職させると、年収の20%〜40%=60万円〜100万円、転職先のクリニックから貰えるので、退職支援金、転職祝い金などを払っても充分にプラスです。
人材紹介・派遣会社の紹介で就職した看護師さんの中で、「もう少し頑張ってみませんか?」と励まされた経験のある方は、「今、退職されると、契約期間を超えていないので返金しないといけない。だから、辞めるなよ」って思われているだけです。勘違いしない方が良いです。
いずれにしても、人材紹介・派遣会社からの職員さんは、高確率で転職(退職)しますし、履歴書の職歴が異様に長い場合には、短期間と割り切って採用する場合を除いては雇用しない方が良いです。この手の職員さんは、退職支援金、転職祝い金を貰いながら、1年毎に職場を変わる方々です。良い悪いではなく、価値観が真逆です。
⚫︎残業時間をゼロにする。電子カルテ、介護保険請求ソフト、検体ラベル機器導入。
医者が医者の仕事をしないと、医療事務さんの残業時間は減らないです。カルテ記載は、医療クラークを雇用していない場合には、自ら記載するしかありません。
検査や処方の病名に関しても、先生が付けるべきですし、高点数検査の病状詳記に関しても経営者の先生が付けるべきです。生活保護医療要否意見書、介護保険主治医意見書なども当然、先生が記載するべきです。
これらの業務を全て医療事務さんに丸投げすると、医療事務さん1人当たりの残業時間は、30時間〜80時間と超ブラッククリニックになってしまいます。
逆に、全てを先生が行うと、医療事務さんの残業は殆どありません。当院は、全ての業務を医師が行うことで、残業時間は殆どゼロです。
これらの作業を紙カルテで行うのは困難です。未記載のカルテ、病名付けやレセプト業務が終わっていないカルテを診察室に運んで、記載する業務の効率が悪いからです。
生活保護医療要否意見書、介護保険主治医意見書に関しては、内容が大きく変わらない場合には、殆どが「コピペ」で対応できます。手書きで処理していた自分が情けなく感じます。それほどに電子カルテの破壊力は凄まじいです。
また、介護保険請求のソフトがあります(6万円〜8万円)程度。電子カルテにソフトを導入すると、医療事務さんの作業は相当に軽減します。紙カルテ、レセコンで行うと、介護請求は別のレセコンで行わないといけなくて、大変だったそうです。電子カルテにソフトを組み込むと、クリックするだけで終わります。在宅訪問診療を行なっている先生は、必須なソフトです。
現在、診察受付終了時間は午後5時30分。15分間で残務処理。10分間、お掃除。午後6時ダッシュ。相当な事情が無い限り、辞めない自信があります。
⚫︎血液検査のオーダーで、検体ラベルが出てくるシステムは必須。
電子カルテ装備と同時に、血液検査会社に依頼すると、検体ラベル機器をリースしてくれます(買い取りはできませんでした)。レ点をつけた紙媒体の血液検査オーダーを見ながら、看護師さんがスピッツを準備しなくて済みますし、間違いも減ります。いずれにしても、電子カルテ、検体ラベル機器リース、介護報酬請求ソフトなど、安い買い物です。
このシステムに慣れた看護師さんは、紙カルテ、紙媒体の検査オーダーのクリニックでは働きたくないはずです。完全なる魅力、セールスポイントです。
⚫︎往診の付き添いをなくしました。夜間の看取りも1人で行います。
往診、在宅診療に看護師さんを同伴させる必要がある、との記載はありません。看護師さんが居た方が、カルテの持ち運び、血液検査などは楽ですが、付き添う看護師さんにとって、かなりのストレスになっているはずです。
血液検査の際には、看護師さんだけに行ってもらえば良いですし、訪問看護ステーションと連携すれば、夜間の看取りも問題ありません。職員さんの業務を極力、院内で収めるように努力することが大事だと考えています。この勤務形態は、他のクリニックで採用している職場は少ないので大きな差別化ポイントです。
(元々、行っていませんでしたが、土曜日の午後診療、日曜診療などもマイナスポイントです。)
◉最大の職場改善ポイントは、女性目線です。
看護師さん、医療事務さんの殆どが女性です。女性の職場を女性目線で構築できない時点で、差別化できないです。そんなこと、思ってもいなかった、という点です。
1)女性は、(女性だけじゃないけど)怒られる、怒鳴られるのが大嫌い。
2)女性は、(女性だけじゃないけど)褒められる。笑顔で向き合ってくれると心地よい。
3)休憩室に全身鏡を配置。トイレ、洗面台付近などに小さな鏡を置く。
4)不潔が嫌い。院長は、白衣、靴、スリッパなどを清潔に保つ。フケ、白髪などにも注意する。
5)髪型、容姿などに一切、触れない。
6)女性の朝の10分間は、夜の1時間に相当する。出勤はギリギリでも可。帰りはダッシュを促す。
7)院長の長話は大嫌い。閉院時間を過ぎて話すとか最悪。自慢話も大嫌い。
8)女性は果物が大好き。評判の食パン、アイスクリームなども嬉しい。
9)休憩時間、院長はクリニックに居ない方が気が楽。
10)可愛い制服、おしゃれな制服、シューズを装備する。
職員さんの機嫌を取っているようですけど、辞めないで真面目に勤務してもらえれば文句はありません。
もちろん、朝礼は毎日。接遇研修、マナー講座なども行い、経営者と職員さんの境界が無くならないようにだけ気をつけるべきです。
院長、経営者の奥様が職場に踏み込んでいただけると、職場は一気に変わります。医者は、医療に関してはプロですが、女性の職場を作るという面では、ズブの素人であると自覚することから始めた方が良さそうです。
新年度、改革のチャンス。出勤時間が早いのは無意味は、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/staff-6/