トイレと侮るなかれ。
先日、記載いたしましたが、クリニックの職場環境が悪化すると、トイレの衛生状態が悪化します。これは、まず、間違いないと思います。
◉トイレが汚いクリニックで、サービスの良いクリニックを見たことがありません。サービスの良いクリニックは、トイレがきれいです。(たまに、外れますけど。)
20年前のクリニック継承時、診療を開始した日の週末の夜、誰も居ないクリニック内、トイレ、休憩室などをチェックしました。
トイレにウオシュレットが装備されていなかった。
トイレの背部に買ったままのトイレットペーパーが置いてあり、上部のナイロン部が破られて、患者さんが取っている状態でした。
トイレ内の手洗い場は、水が飛び散っていて、水垢、石鹸がこびりついていました。
トイレ内の鏡は、誰も拭いていない、掃除していない。汚い。
トイレの電球が古ぼけた電球で暗い。
トイレの天井に綿埃がついている。換気扇も同様に綿埃がついている。
ブラック評)先代院長(父親)は、医師会長や行政職を担っていましたが、「灯台下暗し」でした。トイレを見た瞬間、これは職員さんの教育は行き届いていないだろうし、職員さんは経営陣をよく思っていないであろう。当然、患者さんへの対応は悪いであろうな、と感じました。
以前に記載した通りです。
事務長は、午後から昼寝したり、検査室で喫煙したり、無茶苦茶。
事務の女性(60歳代)は、患者さんにお釣りを投げるように渡して評判は最悪。
患者さんが居ないときは、私語全開。壁に寄りかかる、ベッドに座ってダベる。
⚫︎職場教育が行き届いていないと、ここまで落ちるものか、と悲しくなりました。最後、先代院長(父親)の葬儀の際、あくびはする、雑談して笑っている、など、息子としては、「常識がない。こういう風に教育してはいけない。」と感じました。
当然、職員さんから良く思われていない理由も経営陣にはありました。以下は、推測です。
◉職員さんの気持ちが離れる理由。(当院の場合)
1)先代院長は、医師会長、行政職を担っており、午後から不在が多かった。職場の管理が不充分だった。
2)先代院長は、豪傑、古いタイプの人間であり、時代に対応できていなかった。経営者のトップとして、労務規定、職場環境の細かなチェックができていなかった。
3)先代院長は、自慢話が多かった。(反面、愚痴は少なかった。)
4)先代院長は、「昨日、パチンコで4万円、負けた。」、「競馬で10万円損した。」など、浮世離れした金銭感覚、発言をしていた。
バブルを謳歌した団塊の世代だから仕方がないのでしょうか?時給:1000円の職員さんの前では、とても言えないです。
5)「事務長にしてやる。」、「看護師長にして、賞与を増やしてやる。」など、安易な口約束が多かった。
6)採用面接を人任せにし、就業規則の見直しをおこなっていなかった。
先代院長は、実の父親ですので、悪口は言いたくないのですが、経営者として大事なポイントを学ぶことができました。時代背景も大きいです。30年〜40年前の経営を引きずっていたのでしょう。
◉患者さんから、トイレに対しての要望、クレームの実例。
ウオシュレットをつけてほしい。
〇〇医院は、トイレの匂いが酷いので、行きたくないから変わってきました。
トイレが暗くて、水浸しなのが分からなかった。
正直に記載しますが、「患者さんは、トイレを綺麗に使用しません」。ご高齢な患者さんが多いので、尿がこぼれたり、床を水浸しにしたり、タダだと思って、トイレットペーパーを無茶苦茶に使用します。
患者さんにトイレをきれいに使用してもらうことを期待してはいけないのだと思います。
トイレを清潔に保つのは、クリニックの責任です。これは、コンビニ、ファーストフード店、ホテルなどと同じで、サービス業の当然の業務と考えるしかありません。
では、誰が、トイレを清潔に保つのか?どのように掃除をするのか?当院の経過、方法を記載いたします。
トイレ掃除、業務。退職を覚悟。
◉経営陣と職員さんの距離感が大事です。
当院は、継承時、経営陣から職員さんの心が完全に離れていました。
当院は、職場教育に力を入れ始めた5年前、職員さんの職場への想いが希薄であった。経営陣への気持ちは乏しかったです。
上記は、経営者の責任ですので自業自得です。反省しています。面接、採用の際、「職場の衛生管理は業務である」ことを伝え、就業規則にも盛り込んでおかなければなりません。
20年前の継承時のままの職場では、訴訟や、一斉退職のリスクが高かったと認識しています。職場環境が良くない上、周囲のクリニックからの切り崩しがあり、かかりつけ患者さんも減っていました。
いずれにしても、荒れ放題のトイレ、休憩室、待合室を放置できません。
◉職員さんが入れ替わっても仕方ない。いや、寧ろ、トイレ掃除で退職するくらいなら仕方がない、と腹を括りました。
⚪︎トイレ掃除を徹底するように指導。トイレの掃除ポイントを決める。
便器内、便座が汚れいていないか?必ず、専用の洗剤を用いてブラシを使用して便器を清掃する。
⚪︎水回りの清掃の仕方を具体的に指導する。
洗面台、蛇口周辺が水充しになっていないか?水垢、石鹸がこびりついていないか?
⚪︎トイレットペーパーの補充はできているか?収納はできているか?
◉職員さんの心が離れていた20年前は強引に指導。クリニック経営再構築の5年前には、スマートに業務指導を開始。
1)トイレ掃除を行うこと。輪番で行うことに問題はないのか?社会労務士に確認。就業規則を確認。
2)トイレ掃除を行うように指導。トイレ掃除が確実に行えているのか?チェックシートを付けてもらう。
3)公平に当番制を導入する。午前の診療中は、診察開始前、午前10時30分頃、午前診療終了時の確認。午後は、診察前、夕方4時30分頃、診療終了時にトイレの衛生状態を確認し、チェックシートに記載。
4)土曜日の診療終了後、トイレ掃除のチェックシート1週間分を院長が確認して、押印する。
結果)職員さんの教育を徹底していなかった経営陣が悪いというのは大前提ですが、「トイレ掃除なんかできるか。」と考える職員さんが続々と退職されました。
⚫︎退職理由:「トイレ掃除だけでなく、細かく色々と言われたくない。」、「やりたい仕事があります。」、「今のやり方では付いていけません。」、「奥さまが職場に来られるなら辞めます。」などが退職理由でした。
経営者の院長先生や、奥さまが職場に介入すると、「自分達が好き勝手にできない。」と感じた職員さんがドンドンと退職されます。
経営陣の職場管理、モラルのチェックは非常に大事です。職場や個人のモラルが下がるのは一瞬ですが、上がるのには時間がかかります。一旦、下がると、上がらないのではないか?とすら感じます。
当院を退職した職員さんは、どのような職場に就職したのか?知ることができた方が居られましたが、そのまま引退された方が殆どでした。
ある看護師さんは、ワクチン接種センターで会いました。「緩和ケアを行いたい。」と退職されたのですが、全く違う仕事を行っている現状でした。(退職時に本音は言わないので、真実は不明です。)
⚫︎職場での教育を受けた職員さんと、受けない職員さんでは、その後の職歴に大きな差が出ています。30人程度の看護師さんの退職後しか見ていませんが、明らかに違いがありました。(いずれ、まとめを記載いたします。)
ブラック評)やはり、モラルが低下すると、簡単に再就職できる保証はありません。もちろん、当院に問い合わせがあったわけではありません。
◉可哀想なことをしたな、とは思いません。職場教育を徹底していない分、当時の職員さんは好き勝手に過ごし、たっぷりと給与を貰っていましたから。
(寧ろ、縁が切れてよかったです。院長のコーヒーに洗剤を入れたり、仲の悪い職員さんの歯ブラシで靴の裏を擦るような看護師さんですから、医療ミスどころか犯罪を起こす可能性すらありました。)
コツコツと真面目に働く。礼儀作法、接遇マナーができている。人としての優しさがある方は、評価されて、働きやすい職場に行き着くものだと考えています。当院は、「辿り着いて落ち着ける良い職場」と認知されるように努力しています。
ただ、経営陣にも責任はあります。職員さん教育、職場構築が重要であることが分かりました。もちろん、面接、採用試験と試用期間を徹底し、人間的に成長しようという気持ちがない方を職場に入れないことです。入れてしまうと、すぐに退職したとしても、少なからず他の職員さんに悪影響が出るものです。
トイレ掃除を徹底する前から、職員さんの募集を開始し、退職に備えました。
未経験であろうが、やる気のある方、人間的に成長が期待できる方に入職してもらい、「腐ったリンゴの比率」を下げるしかありません。
面接、適性検査を徹底し、人選を厳しくしました。以前に記載した通りです。採用は、院長、家内と必ず行います。
経過)退職者が出始めますが、その後、一気に職員さんの補充は完了できません。半年〜1年程度、職員さん不足が続きますので、その間、まず、トイレ掃除、院内清掃を地元の清掃業者に一部委託しました。職員さんの数が増えるまでは、ひたすら辛抱です。
休憩室の清掃。(清掃業者が週に1度程度は清掃。基本、職員さんが行う。)
トイレ、水回りなど:清掃業者が毎日清掃。職員さんのトイレ清掃チェックも並行導入。
クリニックの窓拭き、駐車場の清掃:清掃業者が毎日清掃。可能な限り、職員さんも行う。
◉3年経過すると、職員さんの補充が完了しましたが、職場改革中に痛感したことがあります。
職場の雰囲気、モラルを重視し、働きやすい職場を作ると、退職者が出ないので人不足が解消する。
電子カルテ、介護保険ソフト、PCなどの環境を充実させ、残業時間を減らし、職員さんを増やすと、働きやすいので退職しない。
経営者が本気で職場改革に臨むし、採用、人選をしっかりと行うと、モラルが欠如した人や堕落した人は入職しない。結果、職場は良くなり続ける。
仮設診療所から新クリニックへと業務が刷新するので、「みんなで院内清掃時間」を設けても、職員さんが平気な職場に熟成する。
職員さんは、ママさんが多いですので、職員さんが多いと、学校行事、子供さんの発熱で休みが取りやすいので、退職しません。福利厚生も充実しています。職員さんは頭が良いので、「今より良い職場が無い場合」には、辞めません。
トイレ掃除くらいでは、びくともしない職場になっています。経営者のマインドが変われば、3年で職員さんは全部入れ替わります。
医療事務さん、看護師さんを1人多めに雇用する「プラスワン採用」を完了し、現在、募集は行なっていません。
◉経営者のマインド:「ウチより良い職場は無いので、辞めたいならご自由に」と思えることです。
トイレから職場崩壊を見抜き、現在、みんなで仲良くトイレ、院内清掃を行うクリニックに生まれ変わりました。
クリニックの離職率を下げるための福利厚生は、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/hukurikousei/