訪問看護ステーションの違い(当地区の場合。)
当院が在宅訪問診療を行いながら、残業、夜間の呼び出しが無いのは、訪問看護ステーションの看護師さんのお陰です。非常に感謝しています。
訪問看護ステーションをブラックの偏見で2種類に分けてみました。個人的な見解ですので、ご了承下さい。
1)個人設立の訪問看護ステーション、医療機関併立の訪問看護ステーション。
2)医師会設立の訪問看護ステーション。
ここから先は、地域差があります。絶対ではありません。ただ、社団法人である当医師会は、申請した事業計画に沿って経営しています。
当地域の医師会は、訪問看護ステーション、ケアプランセンター、ヘルバーステーションを有しています。事業計画は、「2050年までに〇〇億円の資本を費やし、地域医療の維持のために事業を継続、推進する。」とされています。
毎年度、医師会の社員総会で同じ内容の質問を受けます。
医師会会員の先生:「資料を見ると、毎年、〇百万円の赤字を出している訪問看護ステーションについて、執行部はどう考えているのか?」
医師会会員の先生:「このまま、毎年、〇百万円の赤字を出し続けると、医師会の存続が危ういのではないか?」
地域の医師会の資金、経営状況によって、また、助成金や行政との関係で異なると思いますが、
⚪︎2050年までの28年間で、〇〇億円を使い切ってしまわなければいけない。社団法人の仕組みです。
意図的な赤字、債務不履行になるような赤字は良くありませんが、2050年までに〇〇億円の費用を使い切ってしまう必要があります。
債務不履行になるどころか、医師会の事業計画に謳ってあるので、赤字の方が都合が良いわけです。
以上から、医師会の執行部としては、訪問看護ステーション、ケアプランセンター、ヘルバーステーションの3事業が赤字の方が助かっています。
もちろん、執行部として「赤字で良い。」と発言はできません。そのような発言をすると、訪問看護ステーションの職員さんのモチベーションも下がります。
ただ、事業を継続するのに、黒字ではなく、赤字が好ましいということほど素晴らしいことはありません。
⚪︎人件費に緩い。職員さんを多めに雇用できる。無理をさせなくて済む。
⚪︎営業活動、訪問看護の頻度も、無理をしない程度で良い。
当院は、在宅訪問診療を行う条件として、医師会の訪問看護ステーションを使用することを条件としています。この条件を認めてくださらない方の在宅訪問診療は行いません。(他院に行くしかありませんが、基本、今まで1人も居られません。)
訪問看護を2種類に分けたのは、
⚫︎個人設立の訪問看護ステーション、医療機関併立の訪問看護ステーションの場合、赤字が継続すると、事業規模を縮小したり、人員削減や事業を中止する必要があります。
営業活動や、訪問看護の回数を増やすように指示されたり、人を減らされたりします。
⚫︎反面、医師会設立の訪問看護ステーションの場合、赤字でも仕方がない事業とみなしている。(事業計画通りに医師会の業務を推進するため。)
無理に営業活動をする必要もないし、開業医の先生の指示に合わせて、ゆったりと訪問看護計画を立てることができる。
訪問看護ステーションには、赤字でも構わない事業所があることを知っておかれた方が良いと思います。
クリニックの時間外の業務は、医師会の訪問看護ステーションに依頼。
⚪︎クリニックの職員さんに緊急の携帯電話を持ってもらうことはありません。夜間、休日に呼び出されることもありません。
・当院の在宅訪問診療を行っている患者さんに対し、医師会の訪問看護ステーションが介入しています。
・施設に入所している方は、施設の職員さんが対応してくれます。(癌の終末期、病状悪化時には、医師会の訪問看護ステーションが介入してくれます。)
訪問看護ステーションは、24時間対応です。また、訪問看護指示書により、救急時の対応を決めています。
結果、時間外の急変や対応に関しては、クリニックの職員さんに連絡する必要はなく、院長に直接、連絡が入ります。クリニックの職員さんは、クリニックの業務に専念できますし、呼び出しもありません。
⚪︎訪問看護ステーションの看護師さんは、急変、看取り診療に熟練している。
・癌の終末期、老衰、呼吸不全などの看取りの際、1人で看取りを行うことはリスクがあります。
患者さんのご家族による手のひら返し。「あのような最期を迎えさせたくなかった。」、「医療が不充分で亡くなった。」などとトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
訪問看護ステーションという訪問看護のプロに医療参加してもらい、トラブルを避ける目的があります。
⚪︎クリニックの業務と在宅訪問医療を並行して行うと、業務が多くなり、ミスを起こす可能性があります。
訪問看護ステーションがあるからこそ、当院の職員さんは、クリニック業務に専念でき、良好な職場構築を追求できています。
⚪︎単純にクリニックの退職理由が減ります。
以前、「人間関係が良好であること」と「ブラックな職場でないこと」が、職場に求める要素の65%を占める、というデータを記載しました。
「緊急の呼び出しが無い」、「オンコールの電話を持たなくて済む」、「緊急往診の同行が無い」、「看取りに付き合わないで良い」など、ブラックと呼ばれる要素が減るので、退職理由が減ります。
ここで、「看護師さんとして、やりがいが無いのではないか?」と思われる方も居られるかもしれません。
⚫︎「仕事のやりがい」は、働く本人が求めるものであり、他人が決めるものではありません。
⚫︎「仕事のやりがい」が無いと感じた場合には、退職されるでしょうし、入職を希望されないはず。
⚫︎職場は、働いてお金を稼ぐ場所なので、「仕事のやりがい」について、経営者は口を出さない。
⚫︎やりがい詐欺にならないようにしつつ、職場としての満足度を高めると、勝手に「仕事のやりがい」を感じるもの。
⚫︎人的、時間的、経済的に余裕があって、「仕事のやりがい」を感じ始める時代であることを理解する。
訪問看護ステーションの職員さんのお陰で、良質な医療が提供でき、クリニックの職員さんの雰囲気も良くなって退職者も減りました。一石三鳥以上の効果です。
訪問看護ステーションに見返りを要求する医者が居る。
当然、世の中には、黒字でなければ困る訪問看護ステーションの方が断然に多いはずです。
訪問看護ステーションを立ち上げた事業所長さんや看護師さんが、在宅訪問診療の患者さんを紹介してほしい、とご挨拶に来られます。
当院は、医師会の訪問看護ステーションを利用していますが、今後、患者さんの数が増えた場合や、看護の状況によってお願いするかもしれません、とご挨拶を返します。
しかし、世の中、とんでもない医者が居ます。訪問看護ステーションの職員さんが挨拶に来られたのを良いことに、
⚫︎紹介する代わり、物を要求する医者が居る。
⚫︎お中元、お歳暮を要求し、ビールの種類まで指定する医者が居る。
⚫︎気に食わないことがあると、訪問看護を他の場所に変えると恫喝する。
流石に金銭の要求は無いようですが、お中元、お歳暮を要求したり、金券を要求しているのは、同じようなことです。
こういう不埒な輩は、医師として風上にも置けないので、
1)訪問看護ステーションに患者さんを紹介する代わり、金品を要求する行為を続ける場合には、医師会から除名する。
2)訪問看護ステーションの職員さんを罵倒したり、叱責する行為は、ハラスメントであるので、医師会として事実確認を行い、相応の対応を行う。(健診業務から外す。医師会からの除名。法的処置など。)
せっかく頑張っているのですから、良い医療を提供し、診療報酬を伸ばし、幸福になってほしいです。(赤字で構わないとか言ってるので申し訳ありませんけど。)
訪問看護に関わっている方は、嫌な医者が居たら、無理な要求を呑まず、良識的な医者を探してください。必ず、地域に数名、存在するはずです。(数名ではなく、もっと居られるはずです。)
在宅訪問診療については、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/yabuisha/ヤブ医者の必殺技%E3%80%80往診は儲かります%E3%80%80やりすぎ/