クリニックの窓口収入には、必ず目を通すべきです。
◉クリニックの窓口収入には、必ず目を通します。
クリニックの窓口収入の報告を毎週、医療事務さんにまとめてもらい、週末の土曜日に出してもらいます。1週間の来院患者さん数、訪問診療件数、現金収入を見やすくまとめてもらいます。
2022年6月1日(水曜日)〜6月4日(土曜日)
2022年6月1日(水曜日) 来院患者さん数 〇〇名 訪問診療件数 □□名 窓口収入金 △△円
2022年6月2日(木曜日) 来院患者さん数 〇〇名 訪問診療件数 □□名 窓口収入金 △△円
という感じで、一覧表を作成して貰い、週末か週頭に出して貰います。これには目的があります。
1)入金の状況を見て、経営状態を把握する。
診療報酬と窓口収入は、完璧ではありませんが、綺麗にリンクします。窓口収入を見ていると、その日、その週、その月の売り上げが見えてきます。
医療事務さんに一覧をもらった際、「ありがとうございます。」と言いながら、ファイルに入れていますが、内心では、「今週、どうだったかな?」って思いながら、受け取った瞬間、ガン見しています。それほどに重視していますし、窓口収入が少ない場合には、報酬を上げるべく、自らブーストをかけています。
2)入金ミス、計算ミス、犯罪の抑止のため。
診療報酬の窓口負担を手作業で行なっている場合、入金ミスを防ぐことは困難です。医療事務さんも人間ですので、計算間違いが起こり得ます。
当院のように受付事務員さんが多い場合(正社員、短時間型常勤、パートさん、合計:6名)、間違い、犯罪は起こりにくいです。
疑うわけではありませんが、「キチンと見ています。」というメッセージを出すことで、間違いや犯罪を未然に防ぐことができます。(間違いが起こるときは、どうしても起きます。)
⚫︎具体例1)クリニック。医療事務さん2名。院長は、飲みに行く場合や、麻雀に出かける際、窓口のお金を握りしめて出掛ける杜撰経営者だった。
かかりつけの患者さんが、クリニックの奥様に質問をしました。「私が支払ったお金と、受付事務のノートに記載している金額が違いますけど、大丈夫ですか?」
この質問から、受付事務での横領が発覚しました。入職以来、実に12年間に渡って横領していました。横領していた事務員さんは、非常に頭が良いと思いました。
1)領収証を希望しない患者さんで、小銭の支払いの場合に横領していた。
・「お支払いは、380円です。」と伝え、実際の窓口負担金:280円に100円を足して請求する。
・事務の控えには、〇〇 □□子:280円と記載する。氏名の横に薄くレ点を付ける。
・100円横領はレ点一つ。200円横領は△印、とマーキングし、誤差がないように横領。
2)古い診療所であり、領収書を希望する患者さんは少なかった。
3)横領する患者さんを決めて行なっていた。
院長先生はご高齢であり、警察沙汰にしたくない、とのご希望であり、弁護士を紹介。直近3ヶ月間の横領金額から12年間の横領総額を計算し、返金。念書を貰い、当然に退職金はありませんでした。
横領金額の総額は、200万円程度になったと聞きました。月に数万円程度、少しずつ横領するとバレないと思ったようです。
⚫︎具体例2)診療情報提供書料を勝手に徴収し、職員さんで山分けしていた。
これは、過去に記載したことがあります。とあるクリニックで、診療情報提供書料を2000円〜3000円程度(だったと思います。)患者さんに請求していました。
悪質なのは、クリニックの全職員が加担し、3月は〇〇さんが貰う月、4月は□□さんが貰う月、と決めていました。診断書料や証明書料までも患者さんから多めに徴収していました。
「今月は多いから、〇〇さん、いいなぁ。」と全職員で盛り上がっていたようです。相当に悪質です。仲間割れによる内部告発、新規入職者の通報で発覚したようです。
院長先生は、保険診療の収入しか把握しておらず、本件に関して激怒。横領事件として刑事告発しています。これは、ネットで検索したら出てくるかもしれません。それほど昔の事件ではありません。
経営者である先生は、ご多忙でしょうし、お金に関して尋ねにくいと感じているかもしれませんが、ガンガンに尋ねるべきです。
「電話再診を算定してください。」、「診断書料は、9300円で請求してください。」、「領収証を必ず発行してください。」など、指示を出しておくと、職員さんも間違いは減るでしょうし、抑止になります。
当院は、数ヶ月後、セルフレジを導入しますので、計算間違い、入金ミスなどは無くなるのではないかと思います。此処3年間、入金が合わなかったことは一度もないので、当院の職員さんは非常に優秀ですし、感謝しています。(職員さんの数が多く、残業もないので、心に余裕があると間違いも減るのだと考えています。)
窓口入金から3年間の経営を振り返ってみます。
◉5月決算です。毎月、財務を細かく把握しているので、財務予測はついています。
⚪︎2019年6月〜2020年5月。
総外来患者さん数:1万5748名 総訪問診療数:564名 受け受け入金総額:1841万円。
2019年6月〜2020年5月:総売り上げ高:1億1500万円。
⚪︎2020年6月〜2021年5月。
総外来患者さん数:1万4860名 総訪問診療数:519名 受け受け入金総額:1888万円。
2019年6月〜2020年5月:総売り上げ高:1億1700万円。
⚪︎2021年6月〜2022年5月
総外来患者さん数:1万5211名 総訪問診療数:487名 受け受け入金総額:1928万円。
ブラック評)毎月、財務を確認し、コツコツと頑張ってきました。やはり、2019年は、コロナウィルス感染症の影響はあったので、2020年から翌年まで外来患者さん数が減りました。訪問診療は、看取り患者さんが増え、他界された患者さんも多かったです。
しかし、患者さん数、訪問診療数が減っても、総売り上げ高は伸びているので、一人当たりの単価が増え、看取り医療、高付加価値医療による良い影響が出ていると考えています。また、コロナウィルスワクチン収入も少ないながらも貢献してそうです。
中期的(5年間)には、新クリニック移転も近いですし、外来診療患者さんを増やして、在宅訪問診療患者さんを減らす方向です。時間的にも経営効率的にも、頻繁に訪問診療に出かけるのは辛くなってきました。
仮設診療所での診療中、頚部、心、腹部エコー検査は、必要性、緊急性が高い場合にしか行なっていません。もう少し、クリニックでの検査を増やしたいです。現在、手狭であり、検査は敢えて控えています。
・2022年3月の後期高齢者患者さん一人当たりの診療報酬:1422点。
・2022年4月の後期高齢者患者さん一人当たりの診療報酬:1305点。
当院は訪問診療有りの内科クリニックですが、一人当たりの診療報酬が高い後期高齢者の患者さんの平均点数ですら、上記の通りに控えめです。
伸び代は充分にあるので、必要に応じて検査を行って行きたいです。ただ、無理な検査や強引な算定は好ましくないので、良質な医療提供を前提に頑張ります。
クリニックの財務を徹底する際に気をつけることは、職員さんのマインドだと思います。
◉クリニックの売り上げを伸ばして、経営者としての手腕を発揮する。
当然、せっかく、クリニックを開業し、経営するのですから、好調な財務、節税、健康的な生活と家族との時間を増やして、幸福になることが最優先であると思います。
○先生が急にやる気になられても、職員さんの環境が整っていないと厳しい状況になる。
上述しました通り、毎週、毎月の窓口収入を医療事務さんにまとめて貰いますが、これは医療事務さんの仕事の範疇です。ただ、今まで行なっていなかったのに、急に指示を出すと困惑されると思います。
また、残業時間が10時間以上であれば、その時点でクリニックの経営としてはマイナス評価です。当院は、残業時間は殆どゼロです。
⚪︎医師が、レセプト病名、検査病名、病状詳記、レセプトコメント記入などを全て行なっている。
⚪︎電子カルテを導入しているため、診断書、介護保険主治医意見書、生活保護受給者の意見書など、全て医師が電子カルテで記入、準備できる。
⚪︎診療した日のうちに、病名、カルテ記載を終え、仕事を持ち越していない。
⚪︎充分に職員さんの数を確保できている。
書けばキリがないですが、いきなり色々な業務を開始すると、職員さんはパンクしてしまいます。厳しい言い方ですが、残業しているのは、業務効率が悪いか?人不足か?誰かがサボっているからです。
特に、先生が医師の仕事を行わず、医療事務さん、看護師さんに書類仕事をぶん投げていると、離職率が高くなりますし、悪い噂が広まって、募集をかけても応募がありません。
当院では、上記仕事を行なっても、医師の時間がなくなるわけでもありません。診察終了時に業務を終えています。行政、医師会の仕事がなければ、診察終了とともに帰宅可能です。
⚪︎紙カルテ、紙媒体であり、時間を失っている。
⚪︎職員さんの数が少なく、業務が回っていない。
⚪︎ブラック傾向の職場となり、日々の業務で精一杯である。
◉何かを変えないと改革は断行できません。
一旦、経営陣の給与を下げ、職員さんの数を増やしたり、電子カルテを導入したり、セルフレジを導入したり、何か手を打たないと、時間ばかりが経過してしまいます。当院のように失った17年間を過ごさないように、出来ることから挑戦した方が良いと思います。
職員さんに自宅の庭掃除をさせたり、クリニックと関係のない運搬業務、買い物などを行わせている医療機関を知っていますが、問題外です。そういう職場に勤めて居られる方は、すぐに逃げた方が良いです。また、そのような職場を作り上げた先生は、情報社会、人不足の医療業界で大敗北し、いずれ衰退すると予測しています。
クリニックの開業時に注意することは、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/新規開業クリニックのオープニングスタッフ%E3%80%80開/