クリニック経営の悩み 患者さんの検査誘導と項目

「長期処方」、「受診回数抑制」需要に応えて、結果が伴っている。

◉時代に応じた診療報酬の上げ方を理解する。再診料で稼ぐ時代は終わってしまった。

患者さんやご家族が気軽に医療情報を得る時代です。さらに、コロナウィルス感染症発生3年目に突入しました。

⚪︎患者さんは、クリニック、医療機関を受診する回数を可能な限り抑えたいと希望しています。

⚪︎リフィル処方箋が導入され、長期処方が当たり前の時代を迎えました。

⚪︎再診料や頻繁な受診で診療報酬を伸ばすのは困難な時代になりました。

当院は、たまたま長期処方に舵を切って6年目に突入しました。

・「14日処方の場合、今回は薬だけ、という無診療処方の機会が増える」ため、長期処方を行い、診察を必ず行うように徹底しました。

・患者さん1人当たりの診察時間を確保するために長期処方を増やしました。

「時代に合わせて」とか「今後のことを考えて」とか、何も考えていませんでした。運が良かったです。また、個別指導、行政指導のお手伝いをするので、「あんた、無診療処方してるじゃん。」って言われたくなかっただけです。

⚫︎長期処方に切り替えると、「前年と比較して、年間の売り上げ:10%低下」しました。

⚫︎長期処方に切り替えると、「前年と比較して、年間のレセプト枚数:3%低下」しました。

(14日分処方の患者さんが、全体の30%程度、居られました。)

レセプト枚数は、3%程度の減少に留まりましたが、売り上げが10%も下がりました。この時は、結構、痛いな、と感じましたが、その後、コロナウィルス感染症の発生、拡大の際、ほとんど影響が出ませんでした。

リフィル処方箋導入後、2ヶ月経過していますが、45日分〜60日分処方の患者さんが多いので、リフィル処方箋の話題に触れた患者さんは、「ゼロ」です。

⚫︎リフィル処方箋に関して、患者さんは面倒だと思っている可能性があります。

・リフィル処方箋に変更せず、今まで通りに60日分ずつ処方を受け、2ヶ月毎にクリニックに来て、薬局で薬を貰って帰ることに不満が無い様子です。

⚫︎リフィル処方箋にすると、30日分×3回の90日分とか、60日分×3回の180日分と長期間の処方を受けることができ、再診料、特定疾患指導管理用などのクリニックの費用を抑えることができる。

・「だから、何?」、「今まで通り、クリニックで60日分貰うし、面倒臭い。」、「60日分で不自由してないし、別にクリニックに行って、1500円払うの嫌じゃないし。」って思ってくれている可能性があります。

(リフィル処方箋の希望ゼロ。話題にする患者さんもゼロ。長期処方していれば、患者さんは何も言わない事実がありました。地域差が大きいかもしれません。)

◉短期間処方、受診日数を増やそうとすると、患者さんは逃げてしまいます。

・患者さんや患者さんのご家族は、長期処方が可能であることを知っていますので、14日分処方を繰り返し、月2回の再診料にこだわると、かかりつけ患者さんが逃げてしまう可能性があります。

睡眠導入剤、睡眠薬処方の患者さんは、30日分までしか処方できませんが、それ以外のかかりつけ患者さんは、30日分〜60日分処方を行なっています。

⚪︎ほぼ全ての患者の処方を長期処方に変更後、1年目は、クリニックの売り上げが「10%低下した。」

(現在、14日分処方の患者さんは、5名以下です。患者さんの強い希望で14日処方です。)

⚪︎2年目以降、クリニックの年間売り上げは徐々に増加。1%程度の増加を続けています。

⚪︎2年目以降、クリニックの年間のレセプト枚数も同様、1%程度の増加を続けています。

ブラック評)長期処方を断行すると、1年目の売り上げ低下は、10%程度と大きいです。年間売り上げ1億2千万円でしたので、単純に1200万円の減収です。

ただ、その後、コロナウィルス感染症発生により、長期処方時代が到来。さらに、リフィル処方箋が導入され、長期処方を後押しする形になっています。

当院は、運良く時代を先取りした形となり、保険診療による売り上げに関しては影響がなかったです。逆に、ジワジワと売り上げ、レセプト枚数ともに増加しています。

長期処方、受診回数を減らしたいという需要に結果として応えることができたのかもしれません。

検査のタイミングを逃さないための留意点。

◉患者さんの自尊心を傷つけないように配慮する。経済的な面。

ご高齢の患者さんは、年金を受給されながら日々の生活を営んでおられます。たとえ、1000円、2000円の検査費用でも、事前に検査の予定であることを伝えた方が良いと考えています。

⚫︎患者さんの来院が2ヶ月毎。3ヶ月〜6ヶ月毎の検査の場合、受診の際、検査が抜けると、2ヶ月後まで延期になる。

長期処方を行うので、患者さんがクリニックに来院する間隔が長くなっています。血液検査、心電図検査、検尿検査などの予定につき、しっかりと伝えておかないと、「今回は検査はいいです。」と断られてしまうと、検査が2ヶ月先に延びてしまいます。

・3ヶ月〜4ヶ月毎の採血の患者さんは、年間:3回〜4回の検査機会の予定ですが、充分に伝えていないと、年間:2回〜3回に検査頻度が減ってしまいます。

・検査機会、頻度は、減ることはあっても増えることは、ほとんどありません。

・検査の予定を充分に伝えないクリニックは、かかりつけ患者さん全体で検査頻度が減るので、大幅に売り上げが下がります。

◉長期処方の患者さんが増えた以上、検査機会を逃さないように徹底するしかありません。

1)電子カルテに検査のスケジュールを記載する。「〇月:血液検査、検尿検査」、「□月:胸部レントゲン検査」など、見やすい場所にメモを残す。

2)電子カルテに、「血液検査が無い月は、血糖測定可」と記載して、確実に検査を行う。

3)次の来院の際、検査がある場合には、検尿スピッツを渡して、検査を意識付けする。

4)患者さんに応じ、検査スケジュールを作って徹底しないと、不信感の原因になります。

「患者さんが少ないから血液検査をしているのではないか?」、「自分だけ、毎回、血糖測定しているのではないか?」など。

「〇〇さんは、血糖が高いので、3ヶ月後に採血させてください。」と伝えましょう。

⚪︎採血をさせてください、と「お願いする言葉遣い」だと、患者さんは、まず、不快に思わないですし、断る可能性も下がります。

それでも検査を拒否する患者さんは、誰が検査を勧めても拒否するので、深追いせず、無理強いせず、「血液検査、心電図検査を勧めるも拒否。」とカルテに記載するだけです。

(深く考えず、他の患者さんから検査すれば良いだけです。たまに、執着する先生が居られますが、明らかにマイナスだと思います。)

ブラックが好きな検査項目。検査ローテーション。(個人的な方針です。)

◉通常検査は、保険点数が低いので、患者さんに必要であれば躊躇せずに他の検査を追加します。

・AST/ALT、Gamma-GTP、LDL-コレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖、HbA1cなどの検査は行いますが、診療報酬上、何も期待していません。

・一般の検査が10項目以上であっても、外注検査会社を叩けるだけ叩き、逆ザヤ(診療報酬より検査測定料金の方が高いこと。検査すればするほど損する状態のこと。)は無いので、15項目とかはザラです。

◉大好きな検査。

⚪︎NT-proBNP:136点(1360円):慢性心不全の病名(地域差あり。6ヶ月以上間隔が必要。レントゲン、心電図検査のどちらかを行っていれば、心不全の疑いでも算定可能。)

⚪︎C-PR:108点(1080円):2型糖尿病確定で測定可能。インスリン分泌動態把握。(連月測定不可。6ヶ月毎の検査で減点の経験なし。病名:インスリン分泌異常症を入れると堅いです。不要かもしれませんけど。)

⚪︎酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b):156点(1560円)。骨破壊マーカー。(骨粗鬆症の病名で6ヶ月毎の検査で減点の経験なし。)

⚪︎ヒアルロン酸:179点(1790円):慢性肝炎の肝繊維化マーカー。(慢性肝炎の病名で6ヶ月毎の検査で減点の経験なし。)

⚪︎尿中微量アルブミン定量検査:95点(950円):早期糖尿病性腎症の検査。3ヶ月毎に算定可能。

上記検査に腫瘍マーカーを加えて、検査を行なっています。患者さんに充分に説明し、ご理解いただいています。また、検査を行った根拠をカルテに記載しています。

例)「一般採血+C-PR」→6ヶ月後:「一般採血+NT-proBNP」→1年後:「一般採血+腫瘍マーカー+胸部レントゲン」

検査項目にバラエティー感があると、「傾向的検査」、「確率的検査」と断定されにくいです。また、1年に1回の腫瘍マーカーは、検査の必要性があれば、行っても減点のリスクが低いです。

上記は、完全に補償できませんが、保険の査定、行政指導などを見ると、やはり、「患者さん一人当たりの診療報酬」が高くない場合には、あまり突っつかれていないようです。(地域差、ローカルルール全開ですので、ご了承ください。病名漏れがないようにお願いいたします。)

◉外注検査会社の測定コストを抑えないと、利益は出ませんので、どうか、外注検査会社との交渉を頑張ってください。

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