クリニック経営 看取り診療 お金の計算方法 死亡診断書料

増加している看取り医療。診療の流れ、必要な書類など。

此処数年、在宅訪問診療のみのクリニックも増えてきました。在宅訪問診療のみのクリニックの場合、厚生局のカテゴリーでは、殆どの先生が「内科、在宅訪問診療あり」のカテゴリーの入ります。クリニックを開業されている先生は、厚生局のホームページに掲載されている自院のカテゴリーを確認されてください。

在宅訪問診療のみの場合には、外来診療を行なっていないわけですから、一人当たりの患者さんの診療報酬平均点数が高くなり、まず、間違いなく、「個別指導」に呼ばれます。

外来診療を行いながら、在宅訪問診療を行っている先生も同様ですが、「個別指導」の際には、30冊のカルテ持参を指示されます。「個別指導」の2週間前:10冊、1週間前:10冊、前日:10冊、カルテを指定されるはずです。

厚生局は、非常に頭が良いので、満遍なくカルテを指定してきているように思わせて、実は、狙っているカルテが入っています。在宅訪問診療のカルテが3冊入っていたら、まず、在宅訪問診療を狙っている、と考えて良いです。この点、尋ねても、「バランス良くカルテを指定しています」としか返答しません。

常日頃から「個別指導」を想定してカルテ記載、病名付けを行っていないと、「返金要請の嵐」の結果、「再指導」という、「もう、ぺんぺん草すら生えない」状態に追い込まれます。

在宅訪問診療の際に気を付けるカルテ記載は以下の通りです。

○病名を明らかにする。在宅訪問診療が必要となった主病名を確実にする。

癌の場合には、癌の診断の根拠。他院からの診療情報提供書でも可。誰の依頼で在宅訪問診療となったのか?本人、ご家族の依頼か?明らかにして記載しておきます。

例):大腸癌の終末期。〇〇大学より紹介。肝転移、腹水貯留。厳しい病状。ご本人、ご家族の依頼で在宅訪問診療へ移行。自宅での看取り対応予定。

(厚生局は、希望という言葉が嫌いです。希望ではなく、依頼と記載しましょう。こういうことは、調べても載ってないです。厚生局への先生の印象は大事です。)

○在宅支援診療所の指定を受けているのか?

○訪問看護ステーションと連携しているか?

○在宅訪問診療を受ける患者さんに対して、訪問診療に関する説明書、契約書を交わしているか?

○在宅訪問診療の予定表、カレンダーなどを発行して渡しているか?(カルテに毎月分、入れておく必要があります。)

○看取りの場合、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を行なっているか?

最近、ACPは、間違いなくチェックされます。これは、記載の雛形がありません。日本医師会、学会にモデルがありますが、厚生局は、ACPのモデルを指定していません。いずれ、目安となる記載を掲載したいと考えています。

個別指導の際、厚生局の指導官から称賛されたACPは、1)病名、2)病状の変化、3)現在の病状、4)今後、起こりうる病状の変化、5)家族への説明内容、6)ご本人への説明内容、7)ご本人の望む最期、8)ご家族の望む最期、9)ご本人の人生、最期への価値観、10)ご家族の人生、最期への価値観、11)具体的な処置(心臓マッサージ、人工呼吸器など)の必要性、12)麻薬の使用へのご本人、ご家族の考え、13)急変時の対応。

上記につき、説明した日付、時刻、説明時間を記載して、カルテにファイリングしていた先生が居られました。指導官は、「今後も地域の看取り医療のリーダーとして期待しています」と言ってました。凄いです。この先生は、在宅訪問診療がメインのクリニックの先生でした。

ACPに関しては、癌ばかりでなく、老衰、心不全、腎不全などの看取りの際に必要です。先生の記載し易いフォーマットを作成し、患者さん、ご家族にも配布していた方が良いと思います。

ACPが無い、親の望む最期ではなかった、と紛争、訴訟に発展するケースが増えていますので、ご注意ください。

在宅訪問診療、看取り医療は、お忙しい中、祝祭日、昼夜を問わず、正にプライベートを犠牲にして、患者さんのために医療を頑張っておられると存じますが、診療報酬の算定が不充分な先生が多いようです。

レセプトを拝見しても、これ、看取っているのに加算、充分に算定してないんじゃないか?死亡診断書料の値段が低すぎる、との感想を抱いています。

此処数ヶ月、看取りが増えていますので、実際の診療報酬請求を記載してみます。死亡診断書の値段についても記載してみます。ご参考ください。

施設入所中の大腸癌の終末期の看取り。肺転移、呼吸不全で酸素投与。

⚪︎電話等再診 再診時深夜加算 再診 明細書発行体制等加算 494点×1←看取りのため、電話で呼び出し◉

⚪︎再診 再診 明細書発行体制等加算 74点×1

⚪︎診療情報提供書料 〇〇大学病院 250点×1 ←亡くなられたことのご報告◉

⚪︎往診料 往診を行った日 3月14日 720点×1 ←病状悪化のための緊急往診◉

⚪︎往診料 往診料深夜加算 往診を行った日 3月15日←看取りのための緊急往診◉

⚪︎在宅訪問診療料 同一建物居住 訪問診療を行った日 3月1日、3月8日←通常の訪問診療

⚪︎施設入居時医学総合管理料 ロ)月2回以上 単一建物患者数 9名 往診又は訪問診療年月日 3月1日、3月8日 1400点×1

⚪︎在宅酸素療法指導管理料 動脈血酸素飽和度:98% 2400点×1←短時間でも酸素を投与したら算定できます◉

⚪︎在宅酸素療法材料加算 100点×1←短時間でも酸素を投与したら算定できます◉

⚪︎酸素濃縮装置加算 4000点×1←短時間でも酸素を投与したら算定できます◉

⚪︎訪問看護指示料 300点×1

⚪︎特別訪問看護指示書料 理由:大腸癌、肺転移、呼吸不全の急な悪化のため 100点×1

⚪︎在宅ターミナルケア加算(有料老人ホーム等以外)(在宅療養支援診療所等) 死亡年月日 令和4年3月15日 4500点×1

⚪︎看取り加算 3000点×1

⚪︎血液検査をおこなっています。結果、3月の診療報酬の総額、23000点です。

大学病院から紹介を受けた患者さん。紹介後約4ヶ月後の3月、施設入所中の大腸癌の患者さんを看取りました。元々、入退院を繰り返して施設に入所され、急に血糖が上昇して、大学でCTを撮影したら、転移性肝腫瘍が見つかり、大腸が原発でした。ご高齢、ご本人、ご家族は、積極的な医療、処置を希望されませんでした。

3月1日、8日に通常の訪問診療を行い、血液検査を施行しました。呼吸苦が出始めて酸素投与を開始しました。

⚫︎酸素を投与すると、1日しか投与していなくても、加算が算定できます。

3月14日、病状が悪化し、緊急往診しました。当然、緊急往診料を算定しています。

3月15日、深夜、ご家族、看護師さんから、呼吸が止まっているようだ、と電話を受けます。

⚫︎この電話に対して、病状を聴取し、酸素はそのままにして、待機するように電話で指示しています。これは、電話再診が算定できます。

3月15日、深夜、施設に往診して、結果、最期を確認していますが、この往診も算定して構いません。

⚫︎亡くなったのか?医師が診断しないと確定しません。ですので、看取りを行った際の往診を算定しても構いません。

亡くなった事実、経緯に関して、ご紹介の大学病院に診療情報提供しています。この診療情報提供書料も算定できます。

診療報酬請求を見る機会が多いのですが、どうも、電話再診、看取りの往診料、酸素加算、ターミナル加算などが抜けている先生が居られます。プライベートな時間を犠牲にして、夜中に看取って、算定していないと勿体ないです。頑張った分、しっかりと報酬をもらうべきです。

頻回に往診したわけではないですけど、大腸癌の終末期の患者さんは、3月だけで、23000点(23万円)の診療報酬でした。

国は、自宅での看取りを推奨しています。実は、病院で最期を迎えると、この2倍〜3倍、費用がかかると言われています。実際、患者さんの自己負担は18800円でした。安いか?高いか?患者さんのご家族の価値観です。

死亡診断書料:5000円を含め、23300円をお支払いになられましたが、後日、息子さんが「ありがとうございました」とご挨拶に来られました。間違いなく、感謝されている自信があります。

実は、死亡診断書料:3000円に設定していましたが、3年前、「安いですよ。他の先生は1万円ですよ。」と教えてくれた訪問看護師さんが居られました。

一生に一回のものですので、1万円でも良いのかもしれません。5000円〜2万円が相場です。ただ、看取り医療をしっかりと算定すると、23万円の診療報酬ですから、死亡診断書を値上げする前に、看取り医療の請求漏れを無くす方が先だと考えています。

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