当院の癌患者さんの通院、処方状況。
ボランティアでない限り、どの業種も同じと考えていますが、材料費、製作費などの原価が安けれは安いほど、利益率が高くなります。
クリニック経営において、管理料は、その差異たるものだと考えています。漏れがないようにしておくべきです。
当院は、内科、循環器内科(往診あり)のクリニックですが、癌の術後、癌の治療中のご高齢の患者さんが非常に多いです。全例、大学病院、大病院からの逆紹介です。
近隣在住の患者さんや、かかりつけの患者さん方ばかりですが、高血圧、糖尿病などの疾患を有しておられるので、定期的な診察、処方の依頼と、その際に腫瘍マーカーの測定、胸部レントゲン検査、エコー検査などを依頼されています。
ただ、大学病院、大病院などから逆紹介を受けた場合、気をつけていることがあります。
⚫︎患者さんが拒否しない限り、年1回〜2回の大学病院、大病院の通院を続けてもらうこと。
⚫︎当院で施行不能であるCT、MRI検査を必ず行っていただく。
⚫︎腹部CT、腹部MRI検査、胸部CT検査などは、当院施行の腹部エコー検査、胸部レントゲン検査と重複しても受けていただく。
ブラック評)当院では、癌の患者さんは、専門医療機関との併診を行っています。癌の専門医ではありませんし、化学療法の開始、変更などについては、大学病院や専門病院の先生にお願いしています。
当院で処方している薬剤は、
1)前立腺癌:抗アンドロゲン剤。
2)乳癌:アロマターゼ阻害薬。
以上の癌に対する処方のみです。上記疾患の薬剤に関しては、専門医の先生からの依頼の場合にのみ処方しています。新規処方は、20年間:0件です。
理由1)前立腺癌、乳癌のみならず、悪性新生物、癌に関しては、専門医の診療のもと、治療を受けるべきであると考えているから。
理由2)ご高齢の患者さんは、大学病院、専門病院の通院が距離的、時間的、経済的に負担であり、専門医の先生の紹介の場合にのみ、継続処方を行うべきであると考えているから。
理由3)病状が悪化したり、癌が予想外に進行した場合、全面的に責任を負えるほど、癌の治療に自信が無いから。
以上の理由から新規処方は行っていません。逆紹介くださる先生にもご理解いただいており、大学病院や専門病院で3ヶ月〜6ヶ月毎の検査を行なっていただいてます。
あまりにご高齢な患者さんで通院困難な場合には、ご本人、ご家族のご了承のもと、当院のみの受診となっていますが、前立腺癌、乳癌の急速な進行で他界された患者さんは、20年間で、前立腺癌:1名(90歳代)、乳癌:1名(90歳代)のみです。
前立腺癌の患者さんは、直腸に直接浸潤し、下血。救急搬送し、入院後に他界されました。PSAが急激に上昇していましたが、子供さんは充分に納得されての最期でした。
乳癌の患者さんは、肺炎を発症し、胸部CT検査で両肺に多発肺転移を来していました。呼吸不全で他界されましたが、こちらもご家族は充分に納得されての最期でした。
コロナウィルス感染症禍、医療機関の受診は可能な限り控えたいですので、ご本人、ご家族から処方の依頼があるかもしれません。
前立腺癌、乳癌に限らず、悪性新生物に対する処方の場合には、確定診断を下した専門医の先生からの診療情報提供書、治療の依頼を受ける形にした方が良いと考えています。以下が理由です。
理由1)ご本人、ご家族の依頼があり、クリニックでの処方を開始した形態が好ましい。トラブル回避となり得る。
理由2)悪性腫瘍特異物質治療管理料の算定には、癌の確定診断が必要です。確定診断の根拠は、診療情報提供書でも構いません。患者さんの言い分だけでは、個別指導で突っ込まれることがあります。
悪性腫瘍特異物質治療管理料の算定、記載について。
◉悪性腫瘍特異物質治療管理料:尿中BTA(膀胱癌)220点、その他のもの 1項目:360点、2項目以上の場合:400点です。
◉前立腺癌の患者さんの場合。
前立腺癌の患者さんは、3ヶ月毎にPSA(前立腺特異抗原)の測定が可能です。PSAの採血を行うたび、悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定できます。
・管理料には、検査の点数も含まれるので、PSAの測定コストを可能な限り抑えないと利益が少なくなります。ひどい場合には、逆ザヤが発生している医療機関もあります。ご注意ください。
・外注検査会社は、当然、悪性腫瘍特異物質治療管理料の点数を知っています。また、前立腺癌ではなくても、PSA:124点(1240円)であることを知っています。
・いずれ、各種検査の具体的な費用については明らかに致しますが、当院では、保険点数の半値以下を目標に交渉しています。
外注検査費用のボッタクリについては、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/ボッタクリを知る機会%E3%80%80クリニック外注検査費用/
外注検査のコストカットで1200万円、浮きました→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/ヤブ医者経営脱却%E3%80%80外注費のボッタクリ回避%E3%80%80年/
⚫︎カルテの記載方法。
・病名に前立腺癌の病名を記載する。
・PSA:〇〇ng/mlと、PSAの測定結果のみ記載している先生が多いです。結果のみを記載している場合には、悪性腫瘍特異物質治療管理料は算定できません。返金要請の対象となります。
例)PSA:〇〇ng/mlと3ヶ月前から急激に上昇している。前立腺癌の再発、進行の可能性がある。本人に症状はない。また、炎症反応陰性。骨転移を疑う症状もないが、3ヶ月後、PSA測定の際、胸部レントゲン検査を行い、肺転移の確認を行う。また、骨マーカーを測定し、骨転移の確認を行う。手術を行った□□病院、泌尿器科への紹介を検討する。
上記程度は記載しておかないと、厚生局の指導官から返金要請されても不思議はありません。PSAの結果と合わせて、数行でも良いので、治療管理とみなされる内容を記載しましょう。
◉クリニックに来た通告文。(悪性疾患関連の通告文です。)
⚫︎悪性腫瘍特異物質治療管理料には、適当、曖昧な癌の病名は付けずに、明確な悪性新生物あるいは癌の病名をつけてください。
・「肝腫瘍」、「腎腫瘍」、「肺腫瘍」などの病名をつけて、悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定しても減点されます。
・悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定する場合には、悪性新生物、癌の確定診断がついていることが望ましいです。
・大学病院や大病院などの医療機関の受診を拒否し、クリニックでの腫瘍マーカー、胸部レントゲン検査やエコー検査だけで「肺癌」、「腎臓癌」と診断せざるを得ないケースも多々あります。検査結果、所見用紙、カルテ記載をしっかりと行っていれば問題ありません。
(ご家族がいる場合には、病状、ご本人の意向、今後の予測などを充分に説明し、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)をしっかり行いましょう。患者さんが亡くなられた後、トラブル、訴訟が増えています。)
⚫︎貴院のカルテを拝見しますと、3年以上前から「胃癌の末期」、「肝臓癌の末期」、「大腸癌の末期」と病名のついている患者さんが多数おられます。1人の患者さんに「癌の末期」の病名が多数付いています。病名は、妥当でしょうか?
・レントゲン検査、エコー検査、血液検査のためにつけた「検査病名」が放置されて、保険組合から通告文が来ることがあります。
・在宅訪問診療を行っているご高齢の患者さん、「るいそう」、「寝たきり」状態の場合、「癌の末期」病名をつける癖のある先生がおられます。注意された方が良いです。
⚫︎患者さんが診察中、自分の電子カルテの「胃癌」の病名記載を見てしまい、後日、家族から問い合わせがあった。
・実際には、「逆流性食道炎」と「胃ポリープ」であり、「胃癌」ではなく、「胃癌の疑い」病名であった。内視鏡検査を行い、組織生検のための病名でもあった。
・患者さん、ご家族は、「検査のための病名」という説明に納得、理解が出来ず、医師会に患者さんの代理人の弁護士が訪れた。
・何も病名をつけずに検査を行うことは、現在の我が国の医療では不可能である。内視鏡による「胃ポリープ」の観察で、「胃癌の疑い」を持つ所見があった。
・従って、「胃癌の疑い」の病名で組織検査に提出し、結果、「良性」であった。
・担当した弁護士は、医療の専門ではなかったようであり、検査の際、病名について充分な説明がなされていない、と話を複雑化しようとしていたため、医師会の顧問弁護士に依頼。
医師会の顧問弁護士:そもそも、内視鏡検査の結果説明の際、「ポリープは良性と推測されるが、念のため、組織の検査に提出する」とカルテに記載してある。また、内視鏡検査施行前の同意書にも充分に説明が謳ってあり、本人、家族も同意書に署名、捺印している。
病理組織の結果についても、医師は、充分に患者と家族に説明しており、診察時、電子カルテを横から覗きこんで、病名を見て不安を感じている。医師の過失とは言い難く、当職としては「無責」と判断する。
ブラックの結論)いろんな患者さんが居られるので、随分と色々なことに配慮しないといけないのですが、病名を横から覗かれることまで注意しないといけないとは、難しい時代です。特殊な案件である、と考えています。(この患者さんは、違うクリニックに転院されました。)