メディコム電子カルテ導入3年経過。費用、利点、変更点。
◉メディコムの電子カルテ導入3年経過。当院の費用、電子カルテの使用方法を振り返ります。
⚪︎電子カルテの値段。(当院の場合です。)
・メディコムの電子カルテ診察室1台、受付3台、看護師さんノート型1台 約250万円。
・看護師さん用電子カルテ追加:約40万円。
・毎月の費用:1万3000円〜2万円以下。保守と点検。メディコムのアフターケアが一番良い印象です。遠隔で操作してくれます。(週末、診療時間外に遠隔操作で問題点を解決してくれます。)
・看護師さん用は、ノート型電子カルテを準備していました。しかし、実際に診療を始めると、問診、バイタルサインの打ち込みなどでノート型電子カルテフル稼働のため、他の業務が止まってしまいました。
・他の業務:診療時間中、看護師さんが訪問看護指示書、介護保険主治医意見書などの準備を行ってくれるので、もう1台、電子カルテを追加購入しました。導入は、患者さんの数と業務量によると思います。
(当院の書類枚数:介護保険主治医意見書:年間:60人〜80人分、生活保護意見書:年間述べ約60人分です。)
⚪︎電子カルテを導入して良かったこと。
・診察内容、検査結果など手書きではなくなった。カルテ記載が早くなった。コピペ、フォーマットをフル活用できた。
・紙カルテと違い、電子カルテは診察室にカルテが常にあることと同じなので、病名、レセプト確認が診療の隙間時間で可能になりました。
・医師が病名付け、レセプトチェックを行いやすい。結果、医療事務さんの残業が激減しました。
・紙カルテと違って、電子カルテだとカルテが分厚くなりません。長期間、通院してもカルテが薄いままなのでカルテ棚が小さくて済んでいます。
・分厚くなった紙カルテは、電話帳みたいになって糊付けして補修していました。紙カルテの修繕作業や、紙カルテが見つからないなどの無駄な作業が激減しました。
・介護保険主治医意見書、生活保護医療費書類、診断書など、全て電子カルテ内で作成できています。
・介護保険主治医意見書、生活保護医療費書類は、前回の記載と変わりがなければコピペで処理できています。
・手書きの際には、介護保険主治医意見書、生活保護医療費書類作成:1人分:5分〜10分間かかっていました。電子カルテでは、5分間以内で終了しています。(患者さんによって異なります。)
・医療事務さん、看護師さんの応募が増えました。(電子カルテ導入に反対して退職された医療事務さんが1名居られました。)
・メディコムの電子カルテと相性の良い保険証リーダーを導入しました。東和ハイテックの保険証リーダーが最適です。カルテの作成が速くなりました。(当院導入の東和ハイテックの保険証リーダーは、名前、数字の誤認識が全くありません。)
・診察室にカルテが回って来なくても、患者さんの保険証を見ることができます。社会保険の方だと職業、勤務先が確認できます。もちろん、年齢、性別は当然ですが、再来の患者さんは過去の受診歴を確認できます。
・紙カルテの場合、診察待ちの患者さん数が把握しづらいです。電子カルテだと診察待ちの患者さん数が分かるのでイライラが解消されました。
・電子カルテには、医師用、看護師さん用のメモスペースがあります。これが相当に便利です。
例)8月:採血、9月:胸部レントゲン、心電図など検査予定を記載するので、検査の漏れが圧倒的に減ります。勿論、薬のアレルギー、検査歴、既往歴なども記入しています。
・電子カルテの受診者一覧:トラブル、クレーマー対策ができます。メモスペースに「血液検査拒否。」、「血糖測定拒否。」、「検尿スピッツ不要。」、「検査は先生から直接説明。」と記載し、トラブルを回避できます。
(当院は、血液検査の際に尿を持参していただきます。女性の患者さんに好評です。患者さんに検査を意識づけできますし、検査の抜けが減ります。尿中微量アルブミンを測定すると、尿スピッツ費用は軽くペイできます。)
⚪︎電子カルテで削減できた残業代は、月:30万円以上です。電子カルテを導入後、1年以内に元が取れる計算です。実際に元を取っています。
⚫︎紙カルテ時代。常勤の医療事務さん3人:残業時間80時間以上。ブラックな職場でした。紙カルテの紛失が2件ありました。
⚫︎電子カルテ導入前:20歳代の医療事務さんが退職。40歳代の医療事務さんが電子カルテ導入に反対して退職されました。
◉ブラック評)他院で使用経験がありましたし、思い切って電子カルテを導入しました。電子カルテ導入に反対の医療事務さんが1人退職されました。
電子カルテ導入後、業務の効率化は明らかです。介護保険主治医意見書、生活保護医療意見書など、過去に記載歴がある患者さんは、コピペして必要な部分を変更するだけです。
残業代は浮くし、新しく雇用した医療事務さんは退職しないし良いことばかりです。20年間の開業歴がありますが、もう少し早く導入しておけば良かったと反省しています。
(退職した医療事務さんは、残業代が無くなり、給与が安くなるので退職した可能性があります。紙カルテ時代、残業代を含めて月給30万円前後でした。)
電子カルテの導入に反対する理由。
・かかりつけ患者さんの数が少なく、電子カルテを導入する経営基盤が無い。
・PCに対し、恐ろしく苦手意識がある先生は導入しません。
・院長が高齢であり、電子カルテのメリットを享受する前に引退する可能性が高い。
・紙カルテは、個別指導の際に書き加えることができるので執着している。
◉ブラック評2)紙カルテを選択する理由は、クリニックの規模が小さいこと、院長が高齢であることの2点でしょう。「今更、電子カルテを導入してもなぁ」と考えている先生が多いはずです。
当院は成長戦略に舵を切って、電子カルテ導入後に職員さんを増やしていますが、現実、電子カルテ、保険証リーダー、セルフレジ導入は残業費用を抑えることが主な目的ではないと思います。
電子カルテ、保険証リーダー、セルフレジ導入などによるクリニックのデジタル化は、医療事務さんの作業を減らすだけ減らし、究極、医療事務さんの雇用人数を減らすことに結びつきます。
医療事務さんが2人、年商5000万円のクリニックであれば、電子カルテを導入し、医療事務さんが2人でも業務をこなせるようにする。クリニックの規模が大きくなくても、電子カルテ導入には財務上の恩恵は充分期待できます。
・医療事務さん2人でも残業せずに業務を終わらせることが可能となる。
・最悪、医療事務さんが1人でも、年商5000万円のクリニックであれば、患者さんの数が多くないので、看護師さん、先生が医療事務業を手伝うことができる。(無理がありますが不可能ではありません。)
残念ながら、電子カルテ、保険証リーダー、セルフレジなどのシステムは、医療事務さんの仕事を奪うベクトル上に存在しています。
患者さんの数が少なく、年商が低めのクリニックでも電子カルテ導入の意義は高いはずです。なぜなら、電子カルテが医療事務さんの仕事を代行(奪う)するからです。
紙媒体のレセプト請求がなくなり、オンライン請求になっていますし、医療機関では医療事務さんの仕事は機械に奪われているのが現実です。その代表が電子カルテです。
⚫︎先生と看護師さんだけでもクリニック経営が可能となる時代が来ても不思議ではありません。
⚫︎患者さんが無人受付に保険証をかざし、新規、再診などをパネルで押す。
⚫︎患者さんの携帯電話、スマホに問診票が飛び、患者さんはメールを返す。(メールじゃなくても可です。)
⚫︎メールを見て、先生、看護師さんがカルテを作成し、診察室に呼ぶ。
⚫︎診察終了後、自動レジで会計を済まし、発行された処方箋、領収証を持ち帰る。
悲しいですが、医療事務さんの業務は機械に取られる可能性が高いです。完全に取られることはないでしょうが、経営者は人件費を減らすことにこだわるので、医療事務さんの人数は削減される一方でしょう。
その前に人口が減り、労働人口も減り、クリニックも淘汰されるでしょう。高齢者の方が減ってしまった30年後。人口8600万人の日本のクリニックは、完全にデジタル化されていると思います。
先のことを考えるほどの余裕はないので、コツコツと働いて新クリニック建築の借金を返したいです。勿論、30年後、当院の院長は交代しているでしょうし、クリニックが存在していない可能性もあり得ます。
電子カルテと保険証リーダーは、こちらです→https://町医者の博打と投機と良い医療.com/clinic-open/保険証のリーダーは、是非とも導入した方が良い/